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粉体塗装(粉末塗装)とは、粉末状の塗料を対象物に付着させ、加熱・焼付によって塗膜を形成する塗装方法です。パウダーコーティング(”powder coating")とも呼ばれ、金属筐体、フレーム、建材、自動車ホイール、設備部品など、さまざまな工業製品に対して行われています。
一般的な溶剤塗装が液体塗料を使うのに対し、粉体塗装は粉末状の塗料を使用します。有機溶剤を使わないため、VOC対策や環境負荷の低減に役立ち、厚い塗膜を形成しやすい点も特徴です。一方で、焼付工程を伴うため対象物には一定の耐熱性が必要です。また、薄膜塗装や頻繁な色替え、小ロット多品種の塗装では注意が必要です。
この記事では、粉体塗装の仕組み、メリット・デメリット、溶剤塗装との違い、さらに可動部・摺動部に適したトライボコーティングについて解説します。

粉体塗装は、粉体塗料を対象物に付着させた後、焼付乾燥によって塗膜を形成します。そのため、広い意味では焼付塗装の一種と考えられます。
焼付塗装というと、一般に液体の塗料を加熱硬化させる塗装方法を指します。したがって、焼付塗装の中でも粉末塗料を使うものが粉体塗装、と理解すると分かりやすいです。
他に、シンナーなど有機溶剤で塗料を溶かし塗ったり吹き付けたりするやり方を「溶剤塗装」と呼びます。塗布にはスプレーや刷毛、筆などを使い、溶剤が揮発することで塗膜を形成します。溶剤塗装には「焼付」タイプと「常温乾燥」タイプの両方が存在します。
粉体塗装の一般的な工程は、次の通りです(静電塗装の場合)。
特に前処理は重要です。油分や汚れ、錆、酸化膜が残っていると、塗膜の密着不良や剥がれの原因になります。
| 行程 | 内容 |
|---|---|
| 前処理 | 脱脂、洗浄、化成処理、ブラストなどで表面を整える |
| 乾燥 | 水分を除去し、塗料の密着不良を防ぐ |
| 粉体塗料の塗布 | 静電気や熱を利用して粉体塗料を付着させる |
| 焼付・硬化 | 加熱して塗料を溶融・硬化させる |
| 冷却 | 塗膜を安定させる |
| 検査 | 外観、膜厚、密着性、色、仕上がりを確認する |

過去50年間で、塗装技術は液体塗装から粉体塗装へ大きく転換してきています。この移り変わりには環境規制の強化や省力化のトレンドが大きく影響しています。
粉体塗装は1950年代に欧州で開発されましたが、大きく普及したきっかけは1960〜1970年代の欧米における環境規制(大気汚染防止法など)です。
これらの結果、産業用を中心により便利で高品質な塗装方法として、溶剤塗装からの置き換えが進んでいるのです。


塗装によって向上するのは見た目だけではありません。各種の機能向上にも貢献しています。
塗装が保護、美観、機能の付与を目的としているのは述べた通りです。特に部品同士がこすれ合う可動部や摺動部において、外観や保護だけでなく、摩擦・摩耗などの条件を考慮する必要があります。
たとえば金属同士がこすれる箇所では、塗膜が摩耗したり、剥がれたりする可能性があります。そのため摺動面には、特に摩擦と摩耗に強い表面処理が必要になります。
このような用途では、摺動性能を高めるイグスのトライボコーティングも選択肢になります。

イグスのイグリデュール コーティングは、粉体塗装技術を用いて金属表面にポリマー層を形成し、摩耗からの保護や摩擦係数の低減を目的としたトライボコーティングです。一般的な外観・防錆目的の粉体塗装とは異なり、摺動面での使用を前提に、低摩擦性と耐摩耗性を重視しています。

粉体塗装は以下のような条件においては注意が必要です。

可能ですが、ハードルは低くはありません。設備さえ揃えれば個人でも挑戦できますが、一般的な液体塗装(スプレー缶など)のような手軽さはありません。
粉体塗装には、通常の塗装工具(刷毛や一般的なスプレー)は使えず、静電粉体塗装ガン(パウダーガン)、付着させた粉を180℃〜200℃の高温で15分〜20分ほど加熱(焼付)する家庭用・業務用オーブン、エアコンプレッサーなどが必要です。またこれらを整備しても、塗装できる対象物はオーブンに入る大きさに制限されます。
下地処理(足付け・脱脂)にも手間がかかります。これらを考え合わせると、表面処理は設備をそろえるか、専用の業者に相談することをお勧めします。
粉体塗装は焼付工程を伴うため、一般的には耐熱性のある金属部品に使われることが多いです。樹脂への適用は、素材の耐熱性、導電性、焼付温度、塗装条件によって判断が必要です。
粉体塗装は屋外用途にも使われます。ただし、屋外で使用する場合は、耐候性に優れた粉体塗料の選定、適切な前処理、膜厚管理が重要です。
用途や塗料の種類によって異なりますが、粉体塗装は比較的厚膜になりやすい塗装方法です。薄膜が必要な精密部品や嵌合部では、膜厚による寸法変化に注意が必要です。
目的によって異なります。外観、色、耐食性、塗膜保護を重視する場合は粉体塗装が候補になります。導電性、金属皮膜、硬度、メッキ特有の表面機能を重視する場合はメッキが候補になります。
前処理不足、油分や汚れの残留、焼付不足、素材との密着不良、膜厚不良、使用環境との不適合などが原因になります。
一般的な粉体塗装は、外観保護や耐食性を目的とすることが多く、摺動面では摩耗や剥がれが問題になる場合があります。金属面の摩擦・摩耗を抑えたい場合は、イグリデュール コーティングのような摺動向けのトライボコーティングを検討します。

粉体塗装は、均一な仕上がりと塗膜の厚さ、耐久性や耐食性を高めやすいことから普及してきた塗装方式です。
一方で、焼付に使える素材が限られ、オーブンなど設備も必要なため、個人がDIYでやるには不向きな面もあります。
塗装を考える際はこれらの条件とともに、付与したい機能性も考慮することが重要です。可動部や摺動部においては摩擦・摩耗に対策する必要があり、トライボコーティングなど専用のコーティングが適する場合があります。
適切な塗料やコーティング材を選び、きれいな仕上がりと用途に適した機能を手に入れてください。
可動部や摺動部の金属面では、外観や防錆だけでなく、摩擦・摩耗・潤滑条件まで考慮した表面処理が必要です。
イグスでは、金属面の摩耗対策や摩擦低減を目的としたイグリデュール コーティングをご提案できます。
「金属面の摩耗を抑えたい」「テフロンコートより耐摩耗性を重視したい」「潤滑剤を減らしたい」「軸受やライナーを追加するスペースがない」など、用途に合わせたコーティング材の選定をご相談ください。
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