イグリデュールP230 - 材質データ

図02: 推奨最大許容面圧と温度の関係(60MPa、+20℃)
 
X = 温度[℃]
Y = 面圧[MPa]

機械的性質

イグリデュールP230すべり軸受の圧縮強度は、温度が上昇するに従って低下します。 図02にこの関係を示します。推奨最大許容面圧は材質の機械的物性値です。 これに基づいて摩擦・摩耗特性を判断することはできません。

図03: 面圧と温度による寸法変化率
 
X = 面圧[MPa]
Y = 寸法変化率[%]

図03はラジアル荷重をかけた場合のイグリデュールP230の弾性変化率を示しています。 推奨最大許容面圧60MPaにおいて、室温での寸法変化率は3%未満です。 この値までの塑性変形は無視できます。 ただし、これは使用頻度により異なります。

最高表面速度

m/s	回転	揺動	直動
連続	1,0	0,7	3,0
短期	2,0	1,4	4,0

表02: 最高表面速度

許容表面速度

イグリデュールP230は、低～中速の表面速度用に開発されています。連続運転での最高速度は1.0m/s(回転)、3.0m/s(直動)です。 表02の最大値は、面圧が最低レベルの時の値です。 所定の速度で、摩擦により温度が最大許容レベルにまで上昇することがあります。 しかしながら実際には、温度がこのレベルに到達することはめったにありません。

イグリデュールP230	使用温度
最低使用温度	-30°C
長期使用最高温度	+110°C
短期使用最高温度	+180°C
抜け止めが必要になる温度	+100°C

表03: 使用許容温度

温度

イグリデュールP230の長期使用温度は+110℃であるため、幅広い用途に対応します。 更なる高温耐性が必要な場合、イグリデュールG(+130℃)またはイグリデュールG1(+180℃)をご使用下さい。 温度は軸受の摩耗にも影響します。 温度が上がると摩耗が増大します。温度が+100℃を超える場合、抜け止めをする必要があります。

図04: 摩擦係数とすべり軸受の関係、p = 1 MPa
 
X = 表面速度[m/s]
Y = 摩擦係数μ

摩擦と摩耗

耐摩耗性と同様に、荷重の変化により摩擦係数μも変化します(図04)。
 

イグリデュールP230	無潤滑	グリス	オイル	水
摩擦係数 µ	0,13 - 0,32	0,09	0,04	0,04

図04: スチールに対する摩擦係数
(Ra = 1µm、50HRC)

図05: 回転時における各種軸材質についての摩耗量(p = 1MPa、v = 0.3m/sにて回転時)
 
X = 軸材質
Y = 摩耗量[μm/km]

軸材質

図05はイグリデュールP230すべり軸受をさまざまな材質の軸で試験した結果です。 ラジアル荷重が1MPaの回転運動では、どの軸においても摩耗量は小さいながら「軟質」軸材質では摩耗が大きくなっています。 旋回時と回転時(図06)を比較した場合、その差は他の多くのイグリデュール材質より小さいことが分かります。 イグリデュールP230の使用は低～中荷重に制限されることが明らかです。

図06: 揺動時および回転時におけるS50C製軸との摩耗量と面圧の関係
 
X = 面圧[MPa]
Y = 摩耗量[μm/km]

薬品	耐性
アルコール	+ ～ 0
炭化水素	+
グリース、潤滑油(添加剤なし)	+
燃料	+
希酸	+
強酸	+
希アルカリ	+
強アルカリ	+

+ 耐性あり     0 制限付で耐性あり      - 耐性なし
 
記載値は全て室温時[+20℃]での結果
表04: 耐薬品性

吸湿率

イグリデュールP230すべり軸受の吸湿率は、標準気候条件下で約0.1重量%です。 水中での飽和限界は0.3重量%です。 吸湿率は、イグリデュールM250あるいはイグリデュールGを大幅に下回っています。

放射線

イグリデュールP230すべり軸受は、放射線の下での使用に制限があります。 3 ｘ 10 Gyまでの放射線に対して耐性があります。

耐紫外線性

イグリデュールP230は耐紫外線性に優れています。

真空

真空中ではアウトガスが発生します。 真空環境での使用では脱湿したイグリデュールP230のみが適しています。

電気的性質

イグリデュールPすべり軸受は電気絶縁性があります。

体積抵抗率	> 1012 Ωcm
表面抵抗率	> 1011 Ω

Ø d1 [mm]	ハウジングH7 [mm]	すべり軸受 E10 [mm]	軸 h9 [mm]
～3	+0,000 +0,010	+0,014 +0,054	-0,025 +0,000
> 3～6	+0,000 +0,012	+0,020 +0,068	-0,030 +0,000
> 6～10	+0,000 +0,015	+0,025 +0,083	-0,036 +0,000
> 10～18	+0,000 +0,018	+0,032 +0,102	-0,043 +0,000
> 18～30	+0,000 +0,021	+0,040 +0,124	-0,052 +0,000
> 30～50	+0,000 +0,025	+0,050 +0,150	-0,062 +0,000
> 50～80	+0,000 +0,030	+0,060 +0,180	-0,074 +0,000
> 80～120	+0,000 +0,035	+0,072 +0,212	-0,087 +0,000
> 120～180	+0,000 +0,040	+0,085 +0,245	-0,100 +0,000

表05: すべり軸受の圧入後の公差（ISO 3547-1による）

 

はめあい公差

イグリデュールP230すべり軸受は、公差hで設計した軸（最小でもh9を推奨）に対応する標準ベアリングです。 H7公差のハウジングに圧入するよう設計されています。 公称寸法での組込み後、軸受内径は公差E10に自動的に調整されます。 特定の寸法については、公差は肉厚によって異なります(製品概要表をご覧下さい)。