3Dプリンターで作る正確で安定したギアボックス 費用対効果の高い天体写真用部品

• 要望：カメラとレンズを搭載した装置を24時間で360°回転させるギアボックス
• 製造方法：FDM方式
• 要件：費用対効果が高い、多様でありながら正確な回転速度、高いデバイス強度
• 材質：イグリデュールI150
• 産業：天体写真撮影
• メリット：高精度、高強度、耐摩耗性、スラストワッシャーによる低摩擦性

一眼レフカメラや望遠鏡を安定して回転させるために、ギアボックスや外部操作盤を備えた機構が必要です。

用途の概要：
天体写真撮影では、さまざまな天体を長時間露光で撮影し、適切な媒体に保存します。携帯電話のカメラやデジタルカメラの露出時間を変えたことがある人なら、長時間露光で撮影した写真は、わずかな変化でブレてしまうことをご存じでしょう。地球は自転しており、天体写真撮影に必要な長時間露光にはこの自転が問題になるのです。vhw Digitalart社のファン・ホーヴ氏は、地球の自転を補正し、天体をありのままの形で映像化する装置を開発しました。樹脂製ギアボックスには、ちょうど24時間で360度回転すること、カメラとレンズを支えるのに十分な耐荷重があること、そして個々の部品の高い安定性や耐摩耗性が求められました。また、追跡する天体に応じてギアボックスの速度を変える必要がありました。ギアボックスとモーターや電子機器用のすべてのブラケットは、イグリデュール i150トライボフィラメントを使用して3Dプリントされました。3Dプリント部品のコスト面での優位性に加え、イグスの高機能ポリマーが持つ高い耐摩耗性と回転・揺動用途への適合性も、材料と製造プロセスの選定において大きな役割を果たしました。

地球の自転を補正した場合の写真の変化の例。

問題点

数時間に及ぶ長時間露光を行うためには、地球の自転を補正する必要があります。撮像対象の天体がカメラの視点から動かないようにする装置で、カメラや望遠鏡を安定性を保ちながら動かす必要があります。これには、正確で均一な回転が含まれます。また、天体によって追尾時間が異なるため、コントローラーと外付けのコントロールパネルで異なる回転速度を設定する必要があります。

解決方法

ファン・ホーヴ氏は、イグスと緊密に連携し、プロジェクトに最適な材質を探し出しました。ギア減速比1:38のRL-D-20 関節ユニット により、耐荷重と精度を確保します。3Dプリントされたギアとブラケットの高い強度と耐摩耗性は、トライボロジーを最適化した イグリデュール i150 フィラメントによって実現されています。この材質は特に摺動速度の遅い用途に適しています。ギアボックスのギア減速比は1:243です。部品の間に2枚の スラストワッシャーを付け、3Dプリントされたギアの摩擦を低減し、ロスのない回転を実現しました。ファン・ホーヴ氏は、「いつも通り非常に良い」協力関係だと語っています。

天体写真の仕組みは？

天体写真は、夜空に浮かぶ天体や星雲などを可視光で撮影し、さまざまな媒体に記録するものです。カメラは地軸と平行、地理的に北極の方向に向けます。カメラの傾きは緯度に対応します。このような写真の露光時間は数時間に及ぶため、地球の1日の自転に合わせた撮影が必要です。そうしないと、天体の実際の形状ではなく、線だけが表示されてしまいます。これに対応する装置、トラッカーは、地球の自転速度が1日1回転に正確に一致すれば、自転を補正することができます。また、追尾する天体によって回転速度は異なります。星の場合は、1回転に23時間56分4秒かかります。月は1回転するのに24時間52分28秒必要であり、太陽は24時間ちょうどで1回転します。

下部にあるのがギアボックスのギアです。

高可搬重量にもかかわらず高精度を実現

カメラとレンズまたは望遠鏡の全重量を24時間、360°回転して支えることができる装置でなければなりません。サイズやモデル、機器によって異なりますが、最大で4kgになります。高い回転精度を実現するために、1:38のギア減速比を持つピボットベアリングを採用しています。また、機械的寿命は100万サイクル以上であり、システム全体の長寿命も保証されています。3Dプリントで製造された減速比1:243のギアは強度を高めるとともに、使用されているスラストワッシャーと耐摩耗性に優れたイグリデュールI150樹脂により長寿命を実現しています。

ギアとモーターおよび電子機器用のブラケットは、イグリデュールI150トライボフィラメントで製造されました。

イグリデュールI150－さまざまな強みを持つトライボフィラメント

トライボロジーを最適化したイグリデュールI150フィラメントは、加工が容易で、FDMプロセスのすべての3Dプリンターに適しています。イグリデュールI150は、低速走行での高い耐摩耗性と高機能ポリマーの優れた機械特性に加えて、EU規則10/2011に基づく食品との接触にも適しています。固体潤滑剤を含有しているため、メンテナンスフリーで、ほとんどの用途でその強度と層接着性が活かされます。

詳細：イグリデュールI150製のギアとその間にあるスラストワッシャー。