医薬品ディスペンサー用の複雑な駆動ユニットを低コストで製造

• 要望：複雑なかさ歯車と分離装置内の駆動部品
• 製造方法：レーザ焼結法
• 要件：コンパクトな設置スペース、メンテナンス不要、5年以上の耐用年数
• 材質：イグリデュールI3
• 産業：医療分野
• メリット：複雑な部品を低コストで迅速に製造、長寿命、設置スペースにおける各部品の配置が簡単

用途の概要：
JDM Innovation社は、個人用に包装された医薬品用のディスペンサーの分離装置に、かさ歯車とリニア駆動からなる駆動装置を必要としていました。このディスペンサーは、あらかじめ設定されている投薬スケジュールに従って、個々の薬袋を分包するものです。そのため、非常に小さな設置スペースに収まり、5年以上の耐用年数を持つ、信頼性が高くメンテナンスフリーな部品が必要でした。しかし、一般的な射出成形ギアでは、個々の組み立てに時間がかかり、投薬装置の連続生産ができないため、あまりうまくいかず開発者達は悩んでいました。そこで、イグスの3Dプリントサービスを利用することで、この問題を解決することができました。必要となる複雑なかさ歯車とリニア駆動は、設置スペースにおける個々の要件に応じてCAD設計で開発されました。その後、レーザー焼結法で部品を製造し、すぐに設置することができました。個々の複雑な形状の部品に加え、長寿命という要件もイグスの樹脂、イグリデュールI3によって満たすことができました。これまでに約400台の機器に分離装置とギアが搭載され、1日に最大5回の調剤が行われています。部品は事前に実施された25,000回の耐久試験にも無事合格しています。

あらかじめ設定された時刻に、一つ一つブリスター包装された薬剤を確実に調剤します。

イグリデュールI3を使って長寿命な耐摩耗部品を製作

イグリデュール i3は固体潤滑剤が含まれているため、メンテナンスや潤滑が不要であり、良好な衛生環境が重要な役割を果たす用途に特に適しています。衛生的であることに加え、イグリデュール i3製の部品は摩耗を伴うあらゆる用途に適しています。イグスの試験施設で行われた試験では、従来のレーザー焼結用材質に比べ、耐摩耗性が3〜30倍も優れていることを示しました。また、部品は機械的強度が非常に高いため、特に平歯車、かさ歯車、送りねじナット、特殊スライダー、球面ベアリングの製造に適しています。このことはギア試験で実証されました。イグリデュール i3製の平歯車は、POMフライス加工樹脂製歯車の5倍の耐用年数を示したのです。

3Dプリントギアのエキスパートであるイグスでは、カスタムギアを構成するためのさまざまなオンラインツールを提供しています。寿命予測計算ツールは、イグスの試験施設で実施された試験に基づき、ギアの現実的な耐用年数を表示します。ギアとラックのコンフィギュレーターでは、個々の要求に応じて簡単に部品を設計することができます。オンライン計算では、部品の正確な単価をすぐに確認することができます。

イグリデュールI3製の駆動ユニットは、JDM Innovation社の試験に合格することができました。

問題点

ディスペンサー内の設置スペースが限られているため、最適な部品配置が困難でした。駆動ユニットの取り付けが非常に複雑で、一般的な射出成型ギアでは簡単に解決できないものでした。切断ブレードの搬送ベルトに張力をかけ続けなければならないため、電動モーターの駆動軸にダメージを与えることになり、駆動部品の配置は特殊でした。標準的なギアを装着すると、部品が破損したり、高コストな１回限りの組み立てが必要になる可能性があります。しかし、このディスペンサーは連続生産を前提にしたものでした。さらに、部品の寿命が5年以上であることも必要でした。

解決方法

積層造形法による設計自由度が、小さな設置スペースの要件に正確に部品を適合させることを可能にしました。レーザー焼結法でイグリデュールI3 SLSパウダーから製造された部品を、直接設置し試験を行いました。イグリデュールI3 SLSパウダーは、レーザー焼結用に特別に開発されたもので、非常に優れたトライボロジー特性を有しています。これにより、部品の寿命は従来の樹脂製部品に比べて、最大で30倍長くなります。また、射出成形の場合よりもはるかに短時間でパーツを製造することができました。納期は通常2～3日ですが、緊急の場合、24時間以内に部品を発送することも可能です。

複雑な形状を簡単かつ短時間でプリント

ディスペンサーの分離装置に搭載されるかさ歯車の組み立てには、設置スペースが狭いなど、さまざまな条件がありました。リニアガイドとしてドライリンNミニチュアガイドを搭載した回転ブレードをベルトで移動させます。3Dプリント製の軸は、金属板の中にある2つのイグス製ベアリングにガイドされています。標準的なギアを搭載すると、設置スペースに妥協が生じたり、高コストな１回限りの組み立が必要になる可能性があります。しかし、ディスペンサーは連続生産を前提としているため、より賢明な代替案が必要でした。そこで、同社は積層造形に、この問題に対する適切な解決策を見出しました。カスタマイズされたかさ歯車のCAD設計は、レーザー焼結法で簡単に実現することができました。これにより、ディスペンサー内の小さな設置スペースに妥協することなく、駆動ユニットを設置することができたのです。JDM Innovation社は、正確で緻密な部品の適合性に加え、イグスの高機能ポリマーの耐久性にも感銘を受けました。

CAD図面を見ると、複雑な駆動ユニットが設置されたスペースがコンパクトなことが分かります。