3Dプリント製の耐摩耗性機械式時計パーツ

• 要望：機械式時計のコンポーネント
• 製造方法：FDM方式
• 要件：高い耐摩耗性、優れた機械的性質、高精度
• 材質：イグリデュールI150
• 産業：モデル製作
• メリット：耐摩耗性の向上、部品の長寿命化、脱進機のより規則的な動作、ひいては時計全体のより規則的な動作

用途の概要：
Jugend Forschtプロジェクトの一環として、カイ・シュミット-ブラウンズ氏は完全に3Dプリント可能な時計仕掛けを製作し、機械式時計の脱進機の数学的に計算された断面曲線と、経験的に決定された断面曲線を比較しました。それぞれの断面曲線を試験するために、彼は数学的モデルに基づいて機械式時計をプリントしました。シュミット-ブラウンズ氏は、従来のPLAで製作された部品の実験に加えて、イグリデュールI150トライボフィラメントで製作された部品を使って、異なる断面曲線を試験しました。その結果、イグス素材を使用した脱進機のほうが性能が優れていることが確認できました。トライボロジーを最適化したフィラメントにより、特に高い機械的負荷がかかる部品は、従来のPLAで製作された部品よりも著しく長寿命で規則的な走行を実現しました。

正面から見た機械式時計：エネルギーは巻上げ機構に蓄積

問題点

機械式時計を正確に動かすためには、機構を構成するすべての部品の形状を正確に決定し、可動部の摩擦をできるだけ小さくしなければなりません。カイ・シュミット-ブラウンズ氏のプロジェクトの目的は、3Dプリント可能な機械式時計の脱進機メカニズムを設計し、その形状を数学的モデルで決定することでした。 この数学的モデルにより、機械式時計の動きはより規則的になりましたが、さらに正確な時計を作るための何か他の方法があるのではないかという疑問が浮かびました。 また、従来のPLA製の3Dプリント部品を使った試験では、リフトのラチェット（ラチェットホイールとラチェットリムで構成）のような高負荷部品は、特に長い耐用年数が得られませんでした。

解決方法

従来のPLAで製作された機械式時計の試験後、カイ・シュミット-ブラウンズ氏は重要な部品をイグスのイグリデュールI150トライボフィラメントでプリントされた試料に置き換えました。比較してみると、イグリデュールI150で製作された部品の間の摩擦係数と静摩擦係数が大幅に減少していることがわかりました。さらにはイグス素材の高い耐摩耗性のおかげで、ラチェットの寿命が延び、脱進機の動きもより規則的になりました。

3Dプリンター製の精密な機械式時計

Jugend Forschtは、小学4年生から21歳までの若手研究者を対象としたドイツの青少年科学大会です。参加者は、数学、コンピュータサイエンス、自然科学の分野で、自分で選んだ問題に取り組み、提出することができます。この大会の一環として、ウォルフスブルクのカイ・シュミット-ブラウンズ氏は、まず数学的モデルを設定し、3Dプリント可能な脱進機機構のコンポーネントの正確な形状を決定しました。特に、プロファイルホイールの断面曲線については、明確なパラメータから計算することができました。機械式時計の脱進機は、時計の精度を決定する部分です。脱進機機構は、例えばペレットフォークの助けを借りることで、一定の間隔で歯車列を「抑制」し、時に61秒、55秒といったことなく確実に1分が60秒となるように対応します。プロジェクトの次のステップとして、カイ・シュミット-ブラウンズ氏は、機械式時計の脱進機の数学的に計算された断面曲線と、経験的に決定された断面曲線を比較しました。彼は、経験的に決定された断面曲線よりも、計算された断面曲線を持つ動きの方が、より規則的な速度を持つことを発見しました。

後方から見た機械式時計：左端にあるのがプロファイルホイール。その断面曲線を正確に決定しなければならない。

イグリデュールI150でより正確な動きを実現

カイ・シュミット-ブラウンズ氏は、数式と経験的に決定された断面曲線の比較に加えて、異なる材料を使った脱進機の試験を行いました。選ばれたのは、イグリデュールのI150トライボフィラメントです。ベッド温度40℃、プリント速度30mm/s、レイヤー高0.1mm、押出機温度250℃の条件で、プロジェクトの学生はイグスのフィラメントを使って最高の結果を得ることができました。また、従来のPLA製に比べて、より規則的な脱進機を試験的に検出することができました。脱進機での結果に加えて、トライボロジー的に最適化されたフィラメントは、その耐摩耗性によって高いストレスを受けている部品を改善することができました。機械式時計の巻き上げ機構にあるラチェットのリム（写真参照）は、従来のPLAを使用した場合、イグリデュールI150を使用した場合に比べて、大幅に交換する必要がありました。さらに、イグリデュールI150でプリントしたらせん状のスプリングを使った試験では、従来のPLA製よりも高い靭性と柔軟性を記録することができました。

イグリデュールI150製のラチェットは、ラチェットホイールとラチェットリムで構成されています。

イグスのトライボフィラメントでアプリケーションを長寿命化

イグリデュールI150以外にも、イグスはトライボロジー的に最適化された3Dプリント用のフィラメントを多数提供しています。すべての製品に共通しているのは、スライド走行に適した高い耐摩耗性です。イグリデュールI150は、PLAやPETGのフィラメントと同じように、非常に簡単に加工することができます。イグスの社内試験施設で行われた摩耗試験では、イグスのトライボフィラメントはPLA製やABS製などの従来の樹脂に比べて、最大50倍の性能を発揮しました（写真参照）。また、欧州委員会規則10/2011に基づく食品コンプライアンスにも対応しているため、食品や包装業界での適切な用途にも適しています。この万能なフィラメントは、その加工のしやすさから、3Dプリンターの初心者には最適です。また、専門家のサポートが必要な場合は、短納期でいつでも3Dプリントサービスを受けることができます。

イグリデュールI150の摩耗試験：y軸 = 摩耗率 [μm/km] 1. イグリデュール I150 2. イグリデュール I180 3. PLA 4. ABS試験パラメータ (直動動作): v = 0.1m/s; p = 1MPa; 軸材質: 焼き入れ鋼 (S50C)、ステンレス (SUS304)