アクティブエアロダイナミクス、機能的統合、魅力的なデザイン - 3Dプリントによる多目的の最適化

• 要望：アクティブリアスポイラーシステム
• 製造方法：レーザー焼結パウダーを用いたレーザー焼結法
• 要件：複雑な形状の部品、低摩擦係数、軽量、設計時間とコストの削減
• 材質：イグリデュールI3
• 産業：自動車
• メリット：大幅な時間短縮とコスト削減、非常に複雑な構造の部品を1ピースで生産可能

用途の概要：
OptiAMix研究プロジェクトの「WING3D」コンセプトは、3Dプリントを用いてアクティブエアロダイナミクスを実現するリアスポイラーシステムです。従来の方法で製造されたリアスポイラーの問題点として、油圧をマウントに組込む方法がなかったことが挙げられます。アルミニウムやトライボロジー的に最適化されたイグリデュールプラスチックなど様々な素材の相互作用により、耐摩耗性を向上させつつスポイラーを調整するという革新的な機能を備えたシステムが実現しました。

イグリデュールI3製の非常に複雑なすべり軸受は、低摩擦でメンテナンスフリーの動作を可能にします(著作権:EDAG Engineering社)

問題点

EDAGグループのOptiAMix研究プロジェクトは、イグスと共同で、車のドライビングダイナミクスに応じて位置を変えることができる調整可能なリアスポイラーを作ることを目的としています。 アクティブスポイラーの調整には、摩擦係数の低い耐摩耗部品が必要です。 組込みの油圧装置のためのスペースを十分に確保するため、堅牢な素材が必要でした。 そのため、現在の製造方法では、必要となる軽量で複雑な部品を実現することは困難でした。というのも、その計画と製造には時間とコストがかかりすぎるからです。

解決方法

しかし、3Dプリントであれば、各パーツを設計してプリントすることで、機能性と見た目の美しさを両立させることができます。 また、様々な素材を使用することができるため、カスタマイズされた軽量パーツのプリントが可能です。トライボ特性が最適化されたイグリデュールI3ポリマーを使用して3Dプリントされたすべり軸受を使用することで、通常のプラスチックに比べて大幅に少ない摩擦とメンテナンスで、リアウイングシステムを運用することができます。 この高機能ポリマーは、従来のレーザー焼結材質に比べて最大30倍の耐摩耗性があり、スポイラーの調整に最適な材質です。 フライス加工や射出成形などの製造方法とは異なり、3Dプリントでは複雑な内部構造を簡単かつ迅速に、そして1ピースで実現することができました。

3Dプリント製のすべり軸受インサートによりメンテナンスフリーを実現

リアスポイラーシステムには、3Dプリント製のすべり軸受が使用されています。 その大きな利点は、非常に複雑な部品を迅速にプリントできることです。これは従来の製造工程では容易に実現できませんでした。 特殊な形状や複雑な内部構造を、積層造形法によって1ピースで作ることができます。これにより、コストを削減し、生産を効率化することができます。 特にアクティブスポイラーシステムでは、低摩擦での調整が可能であることが重要です。 ケルンを拠点とするイグスでは、プリント用に開発されたイグリデュールI3を、耐摩耗性と低摩擦性を兼ね備えたすべり軸受に変換するために、3Dプリンターを使用しています。 また、自己潤滑性のあるパーツはメンテナンスフリーで、アクティブリアウイングの調整に最適です。

イグリデュールI3製すべり軸受は、走行状況に合わせて摩擦を抑えた調整も可能です。

充実した機能性を備えた高い設計条件

スポイラーとその統合油圧装置のために、バイオニック・アルミニウム・マウントを製造しました。 油圧装置は、ピストンの動きから最大90バールの油圧を実現し、6°から42°までの無段階の角度調整が可能です。 位置と角度を検出するセンサー用電気ケーブルをマウントに設置することで、走行状況に合わせてスポイラーを調整することができます。 また、ブレーキ機能も搭載されており、マウント部にはLEDブレーキランプが装備されています。 また、摩擦を減らすために、3Dプリント製のすべり軸受も使用されています。 積層造形法が使用されたすべてのパーツは、機能や美観を損なうことなく、他のパーツに正確に適合しています。3Dプリントをデザインの新たなレベルへと導く、形状と機能の素晴らしい相互作用です。

3Dプリントによって実現する魅力的なデザインと高い機能性。(著作権:EDAG Engineering社)

イグリデュールI3によって、犠牲を伴わないアクティブシステムを実現

イグリデュールI3は、レーザー焼結用に特別に開発された材質で、その耐摩耗性は従来のレーザー焼結用材質の30倍にもなります。 樹脂に組込まれた固体潤滑剤が部品の摺動特性を最適化し、さまざまな用途において長い耐用年数を実現します。 イグリデュールI3は、形状と機能を組み合わせるために必要な完璧な高性能ポリマーをアクティブシステムに与えます。 積層造形法による自己潤滑性パーツによって、スポイラーのベアリングポイントは低摩擦でメンテナンスフリーの調整が可能です。 これにより、他のプラスチックでは現時点では不可能なシステムの耐久性を実現しています。

イグリデュールI3 SLSパウダー