イグリデュールすべり軸受のよくある質問(FAQ)


イグリデュールすべり軸受は、どのようにして所定の位置に固定しますか?

イグリデュール製すべり軸受は、軸受け外径の公称寸法で受け穴(H7公差)に圧入し、それによって固定されるよう設計しています。 これは、いわゆる「しめしろ」があるからです。軸受外径は圧入していない状態では、受け穴より0.1~0.25mm程度(公称寸法により異なる)大きくなっています。 内径も、圧入した状態で初めて最終寸法・公差になります。

イグリデュール材質は、なぜこんなに沢山の種類があるのですか?

イグリデュール材質には過去30年間、お客様からさまざまなご要望が寄せられ、それに対応して多様になりました。優れたすべり軸受材質の開発は、単にひとつの特性を開発するということではありません。よくあることですが、ひとつの特性を改善すると別の特性が後退してしまいます。多くの使用においては標準材質、すなわちイグリデュールG、J、X、W300、M250があれば、必要な技術的要求を満たすことができます。しかし、特殊条件や使用条件が厳しい場合、または量産品で最終的に技術・価格を決定する製品となると、その他のイグリデュール材質への重要性が高まります。ここ数年、新しいイグリデュール材質が導入されることにより、無潤滑すべり軸受の使用領域がさらに広がってきました。

イグリデュール材質はどのように設計されていますか?

イグリデュールベアリング材質には、イグリデュールがもつ通常の特性以外に、各材質がそれぞれ備える用途・仕様に応じた特長があります。構造の詳しい情報はこちら

適切なイグリデュール材を見つけるにはどうすれば良いですか?

わずかな使用条件のデータがあれば、イグリデュール製品検索またはイグリデュール寿命予測計算ツールを利用することができます。幅広い種類の材質の中から、最適な材質を素早く選定いたします。

イグリデュールのエキスパートシステムでは、イグリデュールW300とイグリデュールJが最も長寿命の製品だと示しています。どちらを採用したらよいでしょうか?

イグリデュールJイグリデュールW300は、イグリデュール材質の中で最も耐摩耗性に優れ汎用性が高いベアリングです。 寿命が同等でどちらの場合でも十分である場合には、用途の限界パラメータによって選択を行う必要があります。イグリデュールJは吸湿性がわずかで耐薬品性に優れているため、湿潤エリアに適しており、イグリデュールW300はより温度耐性が高くなっています。

イグリデュールすべり軸受が潤滑を必要としないのはなぜですか?

イグリデュール材質は非常に特殊な構造で、熱可塑性マトリックス、繊維強化材、固体潤滑剤で構成されています。マトリックスやベースの材質が持つ優れた耐摩耗性と摩擦特性は、固体潤滑剤によりさらに強化されます。動作時、ベアリングの表面には常に十分な固体潤滑剤の粒子が存在します。そのため、外部からのグリスや油による追加潤滑は不要です。ご質問に関する詳しい情報はこちら

イグリデュールすべり軸受を測ってみると、カタログに記載されているサイズよりもかなり大きいことが分かりました。これはなぜですか?

イグリデュールすべり軸受はH7公差のハウジングに圧入されるよう設計されています。この圧入により軸受がハウジング内に固定され、すべり軸受の内径が圧入によってある寸法に落ち着きます。軸受の寸法は、指定された最小寸法の穴にベアリングを組み込んでから確認します。軸受は圧入していない状態で測定すると、圧入後と比べ外径・内径ともに圧入しろ分、大きくなっています。
軸受を慎重に製作し、組み込んでも、推奨組込寸法に関する差違や疑問が生じることがあります。その原因としては、以下のようなことが考えられます。
測定面を備えたすべり軸受断面図 測定面の位置

穴あけが適切でないので、ベアリングの外側が削られる

使用した圧入冶具センタリングピンにより、ベアリングの内径が広がった

穴がh7公差に対応していない

ハウジングの材質が柔らかく、圧入時に広がった

軸が推奨公差域hに収まっていない

測定が測定線内で行われていない

イグリデュール製すべり軸受のピンゲージ測定

すべり軸受が数個必要で、価格は決定条件ではありません。どのイグリデュール軸受が一番優れていますか?

残念ながら、「一番優れたイグリデュール製すべり軸受」というものはありません。価格が最も高い軸受が、どの使用条件においても一番、耐久性が高いとは限りません。「お客様の条件に最も適したイグリデュール製すべり軸受」をご用意しています。
軸受の選択は使用条件によって決まるということが重要な点です。求められる条件が明確であるほど、技術および予算に合致した最良の軸受を選ぶことが出来ます。そのため、オンラインでイグリデュール製品検索およびイグリデュール寿命予測計算ツールをお使いいただけます。お客様で計算する時間がない場合、使用条件をお送りいただければ当社で計算いたします。

イグリデュール軸受の色は自由に選択できますか?

残念ながら選ぶことはできません。色は通常、各原材料の組み合わせによって生じるものです。材質に適合して製品特性に影響を与えない配合にするためには、1色しか選べない場合もあります。とくに摩耗挙動は、色素も含む材料の組み合わせによって決まります。別の色素を加えることで、摩耗値が数倍になる場合も多々あるからです。したがって、イグリデュール材質はそれぞれ1色のみで、それが各製品を特徴づける結果になっています。

イグリデュールすべり軸受はどのようにして組込みますか?

イグリデュールすべり軸受は圧入して組み込まれます。推奨公差(H7)で仕上げたハウジング穴に、イグリデュールを圧入することで内径が調整されます。圧入前のオーバサイズ寸法は最大で内径の2%です。これによってイグリデュール圧入後の保持が確実に行われます。また、ハウジング内での軸方向またはラジアル方向のずれが防止できます。
ハウジング穴はすべて推奨公差(通常はH7)で仕上げ、可能な限り滑らかで凹凸がなく、面取りされていなければなりません。軸受の圧入には平面プレスを使用する必要があります。不適切な圧入治具を使うとイグリデュールが損傷し、すきまが増加する可能性があります。
すべり軸受の圧入工程 イグリデュール製すべり軸受の圧入

イグリデュールすべり軸受を接着する場合、推奨事項はありますか?

標準的なケースでは、瞬間接着剤で良好な結果を得ています(例:ロックタイト401)。イグリデュールJなど、接着が難しい材質には、2種の接着剤(例:ロックタイト406 + プライマー770)を使うと、数段よい結果が得られます。高温の場合には、エポキシ樹脂系接着剤(例:Hysol)での接着状態が良いこともわかっています。
接着する場合はいずれも、ワークの接着面が清浄で油脂がない状態であることが重要です。クリーンな状態にするためには、専門的な洗浄剤を使用するか、簡単な即効性のあるグリス除去剤でも可能です。また接触面を粗目にすることも、接着性能を引き上げるのに有効です。ただ接着はあくまでサポート機能のため、これが圧入固定に取って代わるものにはなりません。

イグリデュールポリマー製軸受はなぜ環境に優しいのですか?

1.1 当社イグリデュールN54プラスチック製軸受には、その54%に再生可能な原材料を使用しています。
テレビ番組「セサミストリート」の蛙ケルミットならば、「緑でいるのも簡単じゃないんだよ」ということになるでしょう。 ケルミットは手人形なので、そう言えば済むのかもしれません。今日では多くの企業が、COx値を削減するためにさまざまな方策を練っています。しかし「環境にやさしい企業」には、一晩でなれるというものではありません。 通常はさまざまな分野で多種多様な変更を行って、その結果として「環境にやさしい企業」となれるのです。 イグリデュールプラスチック製すべり軸受は環境にどのような貢献をしているのでしょうか? プラスチック製軸受の使用が、環境への有害な影響を削減することが出来るというのは、少し違和感があるでしょうか。
イグリデュールプラスチック製すべり軸受が環境にやさしいといえる4つの側面:

1. プラスチック製すべり軸受は潤滑剤を必要としません。それがまず環境への貢献です。たとえば米国1カ国だけでも、工業用潤滑剤が年およそ40億リットル消費され、その約40%は何らかの形で環境に拡散されているのです。当社は材質開発を継続的に行ってトライボロジーを最適化し、それによって金属製軸受に代る環境にやさしいプラスチック製すべり軸受を、産業の各分野に提供してきています。 潤滑・給油が欠かせない金属・銅製軸受と異なり、イグリデュールプラスチック製軸受は固体潤滑材を材質内に埋込んでいます。したがって、こうした物質が外部に押出・流出することがありません。軸受はグリスも油脂も必要としないので、環境汚染の原因を作りません。

2. プラスチック製すべり軸受は非常に軽量です。 つまり、プラスチックの使用量そのものを削減します。また航空機、車輌、屋外使用機器等の二酸化炭素排出量の削減にも貢献します。重量の削減は慣性を減らし、エネルギー消費を削減するからです。

3. プラスチック製すべり軸受はとくに薬品耐性に優れ、これも環境への特性です。 金属製品は往々にして、環境に好ましくない電気めっき槽を使い、またエネルギーも集中的に必要とします。

4.プラスチック製すべり軸受の製造には、金属製軸受より必要エネルギーが少ないのも特長です。 たとえばアルミニウム1ℓを製造するには原油15ℓが、ステンレス鋼1ℓには原油12ℓが必要です。 これに比べ、プラスチック1ℓを製造するには原油は1ℓしか必要となりません。さらに、植物油をベースとしたプラスチックの開発が進むことにより、この値は今後さらに減少していくでしょう。

製品は重量が増えれば増えるだけ、これを運動させるために必要なエネルギーも増加します。

イグリデュールポリマー製軸受は、軸の選択にどのように影響しますか?

1. 費用からみた側面
イグリデュールプラスチック製軸受の多様性
多くの企業にとって、コスト削減は大きな課題です。省コスト性の高い軸材質を選べるか否かは多くの場合、軸受材質いかんにかかっています。

たとえば、ボール軸受には非常に硬度の高い(60HRC~) 滑らかな軸を必要とします。 銅製軸受も同様で、軸は軸受に使用されている銅より硬くなければなりません。これが対応する軸の選択を制限することになります。 省コスト性の高い軸材質は、こうした軸受には使用できません。
プラスチック製すべり軸受はその一方で、各種軸材に使用できるため軸選択の幅を広げます。 当社イグリデュール製すべり軸受には、非常に幅広い材質を取揃えています。
省コスト性の高い軸材質も、使用に適したイグリデュール製軸受となら組合わせることが可能で、必要とする寿命も得られます。 軸受と軸の寿命は、機械および設備の寿命と同じ長さがなければなりません。 しかし一方で、なぜ機械寿命をはるかに超えた高コストの軸・軸受を選択する必要があるのでしょうか?
2. 摩耗の側面
滑らか過ぎる軸表面の侵食
軸・軸受システムには、コスト要因以外にも着目しなければならない点が多々あります。 これに留意しないと、使用した軸受の機能そのものに大きく影響を与えます。 たとえば軸表面が粗い場合、摩耗が問題となります。 軸表面が粗すぎると、軸受表面の粒子をやすりのようにして削り取ってしまいます。 一方、これが柔らかすぎると、軸と軸受に粘着が発生し摩擦が大きくなります。 静・動摩擦間に非常に大きな差がある場合、接触する2つの面の間にスティックスリップ現象と呼ばれるものが発生します。これが大きなきしみ音の原因となります。

さらに、研磨性粒子が軸受および軸表面に与える影響があります。 軸受と軸の間に何らかの粒子が入り込むと、両者の摩耗が大きく進みます。 汚れ、埃、切粉、紙繊維等の粒子は、摩耗を大きく進ませる要因となります。 固体潤滑材を材質内に埋込み、それにより自己潤滑性を持つ軸受材質は、表面にグリスや油脂を載せていません。したがって、汚れ環境でも明確な長寿命を示します。異物粒子が巻き込まれず、軸や軸受表面にこうしたものが固着しないためです(潤滑油をたっぷり塗った自転車チェーンがどれだけ汚れるかを見れば明確です)。 つまり、汚れ環境での使用においても、こうした軸受を組合わせれば廉価な軸を採用することが可能になるのです。 市場には非常にさまざまな軸材質が出回り、軸受に与える摩耗の影響もさまざまです。たとえばアルミ、スチール鋼、ステンレス鋼、クロムめっき鋼等。最終的には、仕様および使用条件がそれぞれの軸の寿命を決めます。 適合するイグリデュール製すべり軸受を選べば、市場に出回る軸のほぼすべてを採用することができます。
アルミ製軸を使用した摩耗試験
硬化クロムめっき軸は非常に硬く滑らかです。 イグリデュールプラスチック製すべり軸受の摩耗は、この軸を使用した場合には他軸に比べて少なくなります。 しかし表面の粗度が足りないので、場合によってスティックスリップ効果が起きる可能性があります。少負荷で軽量化が求められる場合には硬化皮膜アルミ製軸が、そして湿潤領域および食品製造環境では各種ステンレス鋼製軸が多用されます。 ここでも最良の摩擦値はイグリデュールJとの組合せで得られます。


ピンゲージの測定方法は?

1.1 当社ではピンゲージを使った「Goテスト」(適合試験)を行います。当社軸受をスペックに従って組付けた後、それがきちんと機能するかどうかを検証するのです。

まず、軸受を試験用穴に圧入します。 ここでは、軸受に損傷を出さずに組込むよう留意します。 受け穴への角度を25~30度にするのが理想的です。 さらに、軸受圧入には平らなスタンプのあるプレスを使用することを推奨します。 それがもっとも効果的で、 軸受のしっかりした収まりを確実にします。 ハンマーを使用すると、軸受にエッジが発生する恐れがあります。

1.2 すべり軸受の組付けには、プレスを使った圧入を推奨します。

軸受組付け後、本来のピンゲージGo検査を行います。 ここで「Go(適格)」というのは、ボルトが自重できちんと下に収まった状態で、「No-Go(不適格)」というのはボルトが引っかかっている状態です。 通常、 ピンゲージを0.01mmにして、どの寸法でこれが引っかかるかを正確に測ります。

ピンゲージ検査は、ボルトが実際の使用の軸のような働きをして軸受最狭の断面を表すので、精度が非常に高い品質チェックです。 通常はこれがまさに使用側面を を決めます。 とくに直接関連のない射出成形による不整合等が考慮されないので、プラスチック製軸受にはピンゲージ検査が適合します。  実際に使用してから、ならし運転時に軸受と軸の間の不均一性が整合され、適切なスライド面が形成されます。
軸受の品質検査は他の方法でも行えます。ただ方法によっては、プラスチック製軸受では不正確さが発生し得ます。 とくにノギスの使用は避けます。 精度によりますが、ノギスは基本的には大まかな品質チェックに使うものです。 ノギスから測定点に加えられる圧力によって、測定値に誤りが出る可能性があります。ピンゲージ検査の方が、はるかに正確です。

こうした検査はアクセス条件次第で量産パーツでも直接、行えます (特別な試験品を必要としません)。


自己潤滑性の樹脂すべり軸受が特別な理由は何ですか?

均一構造のすべり軸受、予測可能な特性、高機能プラスチック製
エンジニアによっては、開発中の製品にプラスチック製軸受を使用することに足踏みするかもしれません。 おそらく長年、金属つまり銅製軸受を使用してきた経験から、あるいは条件が困難な場合にプラスチック製品を使うことに思い至らないからなのかもしれません。 しかし、プラスチック製軸受は極度な高温あるいは激しい負荷や高回転数に十分耐えます。 設計時には、使用できる可能性すべての長所と短所を知った方が良いでしょう。 自己潤滑性ポリマー製軸受には、固体潤滑材が微小粒子となって材質全体に均一に組込まれています。 運転時には、この固体潤滑材が摩擦係数を引下げる働きをします。 これは潤滑油やグリスのように洗い流されてしまうこともなく、また均一構造で軸受壁全体に分散しています。層状構造と異なるのは、軸受壁厚全体がほぼ同じスライド条件で摩耗に対応できるということです。
ほとんどのイグリデュール材質には、圧縮強度を引上げる強化材を使用しています。 それにより高負荷および局部荷重にも耐えます。
イグリデュール製すべり軸受はこうした構造によって、荷重条件により多種の軸タイプと組合わせることができます。 結果、コスト面でも常に最良の組合せを選択することが可能になるのです。
高機能プラスチック製イグリデュール軸受は、通常のどこにでもあるプラスチック製軸受と同じではありません。 イグリデュールプラスチック製軸受では、使用条件パラメータを使った寿命計算ができます。 当社には、「エキスパートシステム」とよばれる特別なデータバンクがあります。ここに荷重、回転数、温度、使用パラメータ等を入力すると、システムが保存している試験データを元に、適合するプラスチック製軸受および予測される製品寿命を計算します。
複合軸受は数層で形成されていますが、柔らかいスライド層は異物あるいは不適切な取扱いによって簡単に損傷を起こします。
イグリデュールプラスチック製軸受は簡単なプラスチック製すべり軸受から一歩出て、予測可能な検証済み機械コンポネントへと歩調を進めています。主な特長をまとめると以下のようになります。

1.手間のかかる固形潤滑の使用が不要: 自己潤滑性軸受には、固体潤滑材が材質に組込まれています。 摩擦係数を引下げ、また汚れ、埃、その他の不純物質に強いのが特長です。

2. メンテナンスフリー: プラスチック製軸受はほぼすべての使用領域で、銅または金属製の層あるいは射出成形軸受に取って代わることができます。 汚れ、埃、薬品に対する耐性が高いため、プラスチック製軸受を組付けた後、「すべてのケアを忘れてもよい」と言われるほどです。

3. コスト削減: プラスチック製すべり軸受は、コストを最大25%まで削減します。 非常に高い摩耗耐性とすぐれた摩擦係数が特長で、別の高価な軸受に多くの使用領域で取って代ることが可能です。

4. 摩擦係数および摩耗が低いまま一定に保たれる: プラスチック製軸受はその構造上、寿命期間を通じて常に低い摩擦係数と摩耗を維持します。 金属使用の複合軸受ではスライド面が汚れで損傷しやすいのに比べ、プラスチック製軸受は総じて長寿命です。

5. 完全な耐食性と高い薬品耐性: プラスチック製軸受は錆びることがなく、またさまざまな周辺媒体に対して耐性を持ちます。


樹脂ベアリングに関するイグスの技術的な強みは何ですか?

当社開発部門では毎年100種を超える新コンパウンドを開発しています。
材質は当社が長年に亘って数百種のコンパウンドを備えるまでに開発し、今日、ポリマー製すべり軸受カタログ内には40項目を有しています。構造はほとんどの場合が同様です:

1. 基礎ポリマーは軸受を決める基本的特性、すなわちトリボロジー、機械、温度、化学特性を備えています。

2. 繊維および充填材は軸受負荷容量を引上げます。

3. 固体潤滑材は、摩耗および摩擦特性を最適化します。

当社は各使用領域に対して新しいポリマーの配合を開発。試験室では年1万件の試験を実施しています。 多くの軸受メーカーと異なるのは、当社が高機能プラスチック材質の事業に集中し、その結果、射出成形で省コストなすべり軸受を生産できることです。こうしたプラスチック製すべり軸受は、さまざまな産業で幅広く使われています。たとえば、航空機、自動車、機械製造、包装等の各産業、あるいは医療、スポーツ製品や農業まで使用範囲は多岐に亘ります。 また、当社ではさまざまな試験データを大容量データバンクに収めています。試験後、新ポリマー混合のデータをプールに保存し、このデータが製品の寿命計算に使われます。「エキスパートシステム」とよばれるこのシステムでは、最大荷重、回転数、温度、軸・ハウジング材質等のデータを入力すると、最適なプラスチック製軸受の選択と予測寿命が計算できます。

すべり軸受の摩耗に影響を与える要因は何ですか?


1:イグリデュールプラスチック製すべり軸受の揺動運動における摩耗

影響要因:

軸の選択:それぞれのすべり軸受に合った軸材質を推奨。軸と軸受の組み合わせによって、摩耗への影響は異なります。

荷重:ラジアル荷重(面圧)が上昇すると、すべり軸受の摩耗も増加します。低荷重用、高荷重用にそれぞれ設計されたすべり軸受があります。

速度と稼動の種類:速度が上昇すると摩耗も増加します。さらに動きの種類(揺動、回転、直動)も摩耗率に大きく影響します。

温度:温度はある高さまでは、軸受の摩耗にほとんど影響を与えません。しかしそれを超えると、摩耗が急速に増加する可能性があります。プラスチック製軸受は選択した材質に応じて、かなり広い温度範囲で適合性を示します。しかし最高使用温度を超えると、摩耗は大幅に増加する可能性があります。ほとんどのイグリデュール材質で、摩耗率は温度上昇に伴って増加します。しかし例外もあり、温度が高まると逆に最小の摩耗量となる材質もあります。

汚れた環境:汚れ・粉塵は軸と軸受の間に蓄積します。これが摩耗の原因となります。自己潤滑性のあるプラスチック製すべり軸受が、ここで強みを発揮します。潤滑油もグリスも使用していないため、汚れ・粉塵が軸に付いて軸受を損傷させることがないからです。

薬品との接触:プラスチック製すべり軸受は、優れた耐食性と、多様な薬品に対する耐性があります。しかしある特定の薬品はすべり軸受の特性に構造上の変化を与えるため、硬度の低下と摩耗の増加をもたらすことがあります。


2:各種軸材質での摩耗試験

使用条件とパラメータをより正確に把握していれば、イグリデュール材質の選択にもそれを反映でき、より正確な選択と寿命計算が可能になります。耐用年数にとって重要なのは、適切な材質の選択です。
 

摩耗はベアリングすきまにどのように影響しますか?

軸受の摩耗とは、材質が摺動面(通常は軸受内径)で削られていくことです。

軸受と軸間のすきまは、軸受と軸の公差から計算できます。


使用開始時のすきまは、実際に計測した軸受の内径と軸の外径差です。軸受内径の摩耗が進むと径が広がり、すきまが増大します。
イグリデュール製すべり軸受は層状となっておらず、素材の厚さ全体にわたって均一に摩耗ゾーンを形成しているので、摩耗限界値というものがありません。その代わり摩耗限界は、許容される最大のすきまによって決まります。これはアプリケーションや使用条件によって大きく異なります。精密制御弁で許されるのは、わずか数百分の1程度の摩耗(とすきま拡大)です。軸径50mm以上を超える農業用途では、すきまが1mmでも大きすぎる場合が多々あります。

イグリデュール樹脂すべり軸受ではなく、クシロス ポリマー製ボールベアリングを選択するのはどのような場合ですか?

一般的に、低荷重下での連続的な高速回転(毎秒1.5メートル以上)の場合、イグリデュールすべり軸受よりもクシロス ポリマー製ボールベアリングの方が適しています。ポリマー製ボールベアリングの摩擦係数はすべり軸受に比べて大幅に低く、それが低発熱、低摩耗につながるからです。

ボールベアリングの内径は主要な要因です。内径が小さいほど毎分のベアリング回転数が少なくなり、これが発熱や放熱にプラスの影響をもたらします。ボールベアリングの直径が大きくなると、最大許容荷重が増える反面、最高速度が低下します。高荷重下での用途には、当社の複列ボールベアリングが適しています。汚れや研磨材が生じる環境には、両面シールド付きクシロス ボールベアリングをご用意しています。

スティックスリップ現象とはどのようなものですか?

スティックスリップ現象(stick「付着する」+slip「滑る」)とは、二つの物体を対向方向に滑らせた時に生じる現象のことです。この現象は物体を動かす際、静止摩擦力が動摩擦力よりもはるかに大きい場合に生じます。

滑らかな床上で重い箱を押して動かす場合を想像してください。箱は重く、動かすには箱が動くまいと抵抗する力、すなわち静止摩擦力に対抗するだけの大きな力を加える必要があります。箱は床の上を滑ります。表面が滑らかなため動摩擦力は小さく、箱は素早く加速します。箱が早く滑るため、箱に伝達できる力はより小さくなります。最終的に、箱に作用する力は静止摩擦力を超えるには不十分となります。箱は停止し、静止摩擦力を上回るためにはまた大きな力を加える必要があります。そしてこれが繰り返されます。停止 - 動き出し - スライド - 減速 - 停止 - 動き出し… 実際には、これらは高速で進行し、ガクガクとした動作として現れます。

この現象は様々な領域で起こっています。ワイパーは車のフロントガラス上でつっかえます。チョークを正しくない角度で持つと、黒板に書くときにきしみます。ドアの蝶番もきしみます。これがなければバイオリンやチェロなどの弦楽器は機能しないでしょう。というのも、音は弦と弓の間のスティックスリップ効果である振動によって生じるからです。

しかし、摩擦特性を最適化した材質の場合、この現象は望ましくありません。振動は構造全体に渡り、多くの場合耳障りなきしみと知覚される雑音を引き起こします。理想的な摺動運動は、不規則な引っ掛かりを伴うものとなり、軸受の摩耗を増大させます。この現象は、静止摩擦力と動摩擦力の差を最小化することによって相殺する事ができます、それには減振性のある材質を採用する、全体の安定性を向上させる(例: 予圧式軸受)あるいは互いを分離するような材料(例:潤滑剤)を使用するなどがあります。
1. 外力 > 静止摩擦力
外力(矢印1) が静止摩擦力(矢印2)を上回る。 箱が動き始める。
 
2. 外力 = 静止摩擦力
静止摩擦力は動摩擦力(矢印2)になり、箱は素早く滑る。
 
3. 外力 < 動摩擦力
外力(矢印1) が不十分で動摩擦力(矢印2)に対抗できない。
 
4. 外力 < 静止摩擦力
動摩擦力は静止摩擦力になる。 力は不十分であり、箱は停止している。

イグリデュールすべり軸受はRoHSに準拠していますか?また、そもそもRoHSとは何ですか?

EU指令2002/95/EG (RoHS 1) は、2013年1月3日にEU指令2011/65/RU (RoHS 2) に変更されました。
この指令では、EU市場で流通する電気・電子機器に含まれる有害成分の制限を規定しています。RoHSとは、特定有害物質の使用制限 (Restriction of (the use of certain) Hazardous Substances) の略称です。
多くの材質や製品において完全な排除は技術的に不可能なため、具体的な制限値が定義されています。電子機器に多く使用される鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)およびジフェニルエーテル(PBDE)が該当します。例として、はんだ付けまたは金属製複合軸受の成分としての鉛の使用、および難燃剤としてPBBの使用などが挙げられます。また多くの合金に、これらの物質が使用されます。物質の内容や事例から分かるように、これらの物質は、当社のイグリデュール材質のような熱可塑性化合物にはまったく関係しません。したがって、イグリデュール材質の成分は、ガイドライン2011/65/RU (RoHS 2) の指令の要件を満たしています。ご要望に応じて、対応する確認書をお送りします。

22. イグリデュールすべり軸受は耐薬品性がありますか?

すべり軸受にとって、化学物質との接触は多くの場合困難な課題となります。例えば、食品業界では消毒剤や洗浄剤を使用したり、軸受がクーラントと接触したりすることがあります。イグリデュール材質は、多くの化学物質に対する耐性試験を行っています。そのため、消毒剤や洗浄剤、その他の化学薬品と接触する用途にも使用することができます。イグリデュールの「Hシリーズ」(イグリデュールH1、H370など)とイグリデュールX材質は、特に耐薬品性が優れているとされています。

23. すべり軸受とは何ですか?

機械工学において、すべり軸受とは、互いに相対的に動く表面を分離する部品を意味します。表面の摩耗による損傷と、摩擦係数の増加を防ぐため、動作に必要なエネルギーおよび摩擦熱の発生が低減されます。

24. すべり軸受はどのような場合に使用しますか?

すべり軸受は、動作を伴う表面の摩擦や摩耗を低減する場所で使用されます。その事例として、変動する温度下で膨張する橋の軸受やオフィスチェア可動部の軸受、また電動歯ブラシのピンヘッドサイズの軸受など、幅広い分野で使用されています。
一般に、すべり軸受は、面圧と運動強度の組み合わせが高すぎない用途に適しています。PV値とは、面圧(N/mm²)と速度(m/s)の積です。ほとんどのすべり軸受では、メーカーにより最大許容PV値が指定されています。これを超える場合は、そのすべり軸受は用途に適さないことになります。そのため、冷却を追加するか、ボールベアリングの使用を検討する必要があります。ただし、十分な冷却や潤滑による摩擦の低減により、PV値が非常に高い場合でもすべり軸受を使用することができます。

25. すべり軸受の役割は何ですか?

すべり軸受は、可動部の表面を摩耗から保護し、可動部間の摩擦を低減するために、可動部品を互いに分離します。摩擦係数が低くなることで、動作に必要な力、つまりエネルギーを低減することができます。

26. すべり軸受とボールベアリングはどちらが優れていますか?

すべり軸受とボールベアリングは、それぞれ異なる動作原理に基づいているため、仕様が異なります。これらの仕様により、用途に応じた適否があります。すべり軸受は、1つまたは複数の材質で構成される一体型の部品で、固体潤滑剤の組み込みまたは追加潤滑によって摩擦を低減することを目的としています。すべり軸受は、費用対効果と省スペースが求められ、荷重と速度の組み合わせが高すぎない用途に適しています。ボールベアリングは、リングの間に複数のボールやローラーが取り付けられています。これらは、ボールベアリングの内輪の周りを回転するため、隣接する部品が互いに相対的に動きます。ボールベアリングの利点は、実質的にクリアランスのない設計が可能なため精度が高く、また転がり抵抗が非常に小さいことです。すべり軸受の低い摩擦係数と同様に、非常に滑らかな動きを実現することができます。しかし、その分、より多くの設置スペースが必要になります。重量が重く費用も高くなり、汚れの侵入や潤滑油の損失を防ぐ必要があります。