イグリデュールH370 - 材質データ

図02: 最大推奨面圧 - 温度による変化 (75 MPa 、+20 °C)

X = 温度 [°C]
Y = 荷重 [MPa]

図03: 変形 - 　荷重と温度

X = 荷重 [MPa]
Y = 変形 [%]

機械的特性

最大推奨面圧は、材質の機械的特性を示します。 したがって、摩擦特性への言及はできません。 温度が上昇すると、イグリデュールH370製スライドベアリングの圧縮強度は低下します。 図2は、この関係を明確にしました。
 
図03は、ラジアル荷重下での、イグリデュールH370の弾性変形です。 最大推奨面圧75MPaで、室温での変形率はおよそ2.5%です。

m/s	回転	揺動	直線
連続	1,2	0,8	4
短時間	1,5	1,1	5

表02: 最大スライド速度

許容滑り速度

最大許容滑り速度は、ベアリング面の温度が上昇しすぎない範囲に設定しています。 イグリデュールH370は、スライド速度1.2 m/s (回転)、または4m/s(リニア)までの使用に適しています。

表02で示した最高値は、圧縮荷重が最低の時にのみ得られる値で、実際にはこれに達しない場合が多いのが事実です。

iglidur® H370	使用温度
下限	- 40 °C
上限、長期	+ 200 °C
上限、短期	+ 240 °C
アキシアル追加保護が必要になる温度（これを超えた場合）	+ 100 °C

表03: 温度限界 - イグリデュールH370

温度

温度が上昇すると、イグリデュールH370製スライドベアリングの圧縮強度は低下します。 ベアリング内部の温度も、ベアリング磨耗に影響します。 温度が高くなるほど摩耗量は増加します。+100℃以上の高温環境では、ベアリングの抜け止めをする必要があります。

図04: 摩擦係数とスピード、 p = 0,75 MPa

X = スライド速度 [m/s]
Y = 摩擦係数μ

図05: 摩擦係数と荷重、 v = 0,01 m/s

X = 荷重 [MPa]
Y = 摩擦係数μ

摩擦と磨耗

摩擦係数は、耐摩耗性と同様に、荷重や速度が増加してもわずかしか変化しません（図04、05）。

iglidur® H370	無潤滑	グリス	油脂	水
摩擦係数　µ	0,07 - 0,17	0,09	0,04	0,04

表04: 摩擦係数 - イグリデュールH370 対スチール鋼製軸(Ra = 1 μm, 50 HRC)

図06: 磨耗、さまざまな軸材質を使用、回転（ p = 1 MPa, v = 0,3 m/s）
 
X = 軸材質
Y = 磨耗 [μm/km]
 
A = アルミ、硬質アルマイト処理
B = 快削鋼
C = S50C
D = S50C、 クロム硬化
E = STKM12A
F = SUS304
G = SUS440B

軸材質

図06と07は、様々な軸材質とイグリデュールH370軸受の試験結果を示しています。
 
荷重2MPaまでは、硬質クロムめっき軸が回転用途でイグリデュールH370軸受にとって最良の材質となります。 SUS304軸での摩耗量はかなり高くなりますが、これは、極めて滑らかな表面によってスティックスリップ効果が起きるためです。 STKM12A軸は、2MPaから始まる最低範囲での値は同じですが、S50Cよりも優れた値を示します。その一方、SUS304軸は揺動運動で明らかな優位性を示します。

媒体	耐性
アルコール	+
炭化水素	+
グリス、油脂、無添加	+
燃料	+
希釈酸	-
強酸	-
希釈アルカリ	＋ ～ 0
強アルカリ	＋ ～ 0

+ ： 耐性あり 0 ： 制限付で耐性あり – ： 耐性なし
条件：室温+20℃の場合
図05: イグリデュールH370の耐薬品性

電気的特性

比容積抵抗	< 105 Ωcm
表面抵抗	< 105 Ω

イグリデュールH370製スライドベアリングは電気絶縁です。

耐薬品性

イグリデュールH370製スライドベアリングは、優れた薬品耐性を備えています。 また、潤滑材に対しても、ほとんど全てに対して耐性を持ちます。

ほとんど全ての有機・無機弱酸類に対してイグリデュールは耐性を持ち、その侵食を受けることがありません。

放射線

イグリデュールH370は、中性子およびガンマ線照射を受けても、その抜群の機械的特性に影響を見せません。 イグリデュールH370製スライドベアリングは、放射線強度2 x 10² Gyまでの耐性があります。

耐紫外線性

イグリデュールH370製スライドベアリングは、紫外線に対する長期的耐性があります

真空

真空内では、中に含まれていた水分がガス化します。 水分吸収率が非常に少ないので、真空での使用が可能です。

最大吸湿率
+23 °C/50 %時の相対湿度	< 0.1 重量%
最大吸水率	< 0,1 重量%

表06: 湿度吸収 - イグリデュールH370

図10：吸湿率
 
X = 湿度吸収 [重量%]
Y = 内径Øの縮小 [%]

吸湿率

イグリデュールH370製スライドベアリングの湿度吸収率は、標準大気内で0,1%未満です。 水中の飽和限界は、同様に0.1%未満です。 イグリデュールH370はしたがって、水中使用に最も適したスライドベアリング材質です。

径 d 1 [mm]	軸 h 9 [mm]	イグリデュールH370 F10 [mm]	ハウジング H7 [mm]
3まで	0 - 0,025	+0,006 +0,046	0 +0,010
> 3 bis 6	0 - 0,030	+0,010 +0,058	0 +0,012
> 6 bis 10	0 - 0,036	+0,013 +0,071	0 +0,015
> 10 bis 18	0 - 0,043	+0,016 +0,086	0 +0,018
> 18 bis 30	0 - 0,052	+0,020 +0,104	0 +0,021
> 30 ～50	0 - 0,062	+0,025 +0,125	0 +0,025
> 50 bis 80	0 - 0,074	+0,030 +0,150	0 +0,030

表07: 主要公差 - イグリデュールH370製スライドベアリング 、ISO 3547-1基準、圧入後

組込み公差

イグリデュールH370製すべり軸受は、公差hで設計した軸（最小でもh9を推奨）に対応する標準ベアリングです。 ベアリングは H7公差で圧入するよう設計されています。 公称寸法で受け穴に取付けた後、ベアリング内径は公差F10で自動的に調整されます。 特定の寸法については、公差は肉厚によって異なります（製品概要表をご覧下さい）。