耐摩耗性
機械部品の摩耗量は様々な影響によって左右されるので、摩耗挙動についてひと言で表すのは難しいものがあります。しかし多くの試験で摩耗量が計測され、軸と軸受の材質の組合せにより、摩耗に大きな差が出ることが分かっています。同じ荷重と速度でも、材質の組合せによって、耐摩耗性に10倍近い差が出ることもよくあります。
荷重と摩耗
荷重の大小は、軸受の摩耗に非常に大きく影響します。イグリデュールには、低荷重、高荷重、超高荷重用まで、各荷重に最適な製品があります。たとえば、S50C製軸に対して、低荷重ではイグリデュールJが高い耐摩耗性を示します。対してイグリデュールQは、超高荷重に最適です。
摩耗と温度
イグリデュールすべり軸受の耐摩耗性は、広い温度範囲にわたり、ほとんど変化しません。しかし、最高温度領域では温度の影響が大きくなり、温度が上昇すると軸受の摩耗量も増えます。
表06は、摩耗限界温度を比較したものです。
ただ一つの例外はイグリデュールXです。イグリデュールXの耐摩耗性は温度が上昇するについて増大し、+160°Cでピークに達します。これ以降、始めはわずかに、そして次第に下降します。
研磨性粉塵・汚れによる摩耗
研削性の高い粉塵や粒子が軸に付着すると、とくに摩耗による問題が起きやすくなります。イグリデュールはこうした用途でも、材質が持つ優れた耐摩耗性と無潤滑運転により、長寿命を実現し、機械や設備のダウンタイムを大幅に改善します。軸受はグリスや潤滑油を使用しないので、粉塵や粒子はその多くが軸受内に巻き込まれず、汚れは外に掻き出されます。たとえ硬い粒子が軸受内に食い込んでも、イグリデュールは軸受表面に異物を取り込み吸収します。そのため、粉塵の多い環境で使用しても、ある程度までは最適な状態で機能します。しかし、軸受と軸を損傷させるのは、硬い粒子だけではありません。繊維や紙のような柔らかい物質も、往々にして摩耗増加の原因となります。この場合、イグリデュールの自己潤滑性及び耐摩耗性が威力を発揮します。
摩耗と軸表面
軸の表面状態は、軸受の摩耗に非常に大きく影響します。摩擦係数と同じように、軸の表面が粗すぎても滑らかすぎても、摩耗が増加します。粗すぎる軸表面はヤスリのように、軸受の表面を少しずつ削り取ります。軸が滑らかすぎても、粘着が起きることにより摩擦が極端に上昇し、軸受材質が削り取られます。腐食による摩耗にもご注意ください。これは直線的推移を見せず偶然性によるばらつきが大きいため、予測は困難です。